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論理

前回の記事もそうですが、今回の記事も、わかっている人には今更言われるまでもない当然の話だと思います。しかし、当たり前のことを当たり前にこなせば受かり、当たり前のことを当たり前にこなせなかったから落ちるのが司法試験です。おそらく、成績が伸び悩んでおられる方は、このような当たり前のことが当たり前になっていないことが多いのではないかと思います。これらの記事は、勉強の最初の一歩のような話ですが、最初の一歩の方向が誤った方向を向いていれば、いつまでたってもゴールに向かっていけません。常に、自分の進行方向が正しい方向に向いているのか、チェックすることを心がけてみるとよいと思います。とりわけ、このような基本的な話であればあるほど、難しい勉強に意識を注いでいくうちに、いつの間にか忘れてしまっていることが多いものです。気をつけてみてください。


(1) つなぎ
趣旨や本質からの論証をする場合、そのような趣旨や本質と結論をつなぐ部分が「論理」になります。この「つなぎ」がなければ、「論理」を示したとはいえません。例えば、以下の2つの論証例を見てください。

A 民法96条3項の趣旨は、取消しの遡及効により第三者がその法的地位を覆されるのを防ぐことにある。
  したがって、「第三者」とは、取消前の第三者をいうと解される。

B 民法96条3項の趣旨は、取消しの遡求効により第三者がその法的地位を覆されるのを防ぐことにある。
   そして、取消し後に登場した第三者は、取消しの遡及効によりその法的地位を覆されることはない点で、右の趣旨が及ばない。他方、取消し前に登場した第三者は、その法的地位が取消しの遡求効で覆される点で、右の趣旨が及ぶ。
  したがって、「第三者」とは、取消前の第三者をいうと解される。

Aの論証は、予備校の答案などでよく見られるパターンです。民法96条3項の趣旨から接続詞1つで直ちに結論を導いています。しかし、Bの論証と比較すれば、趣旨を示しただけでは、そのような結論になることの理由が不足していることが分かると思います。これでは「論理」を示したとはいえません。Bのように論じてはじめて「論理」を示すことができます。つまり、「そして」から始まる一文の部分が「論理」になっている訳です。
(2) 試験本番
 試験本番では、時間の制約から、常にBのように書くことはできません。しかし、少なくともメインの論点については、B程丁寧にしないまでも、「論理」の部分を書く必要があると思います。また、現場思考で解釈をしなければならない問題では、当然、趣旨や本質から結論を導く「論理」を示す必要があります。
(3) 日常学習
さらに、普段の学習で、判例や学説の解釈を理解する上でも、判例・学説が、趣旨や本質からどのような「論理」で結論を導いたのかをしっかりと理解する必要があります。普段から、ここでいう意味の「論理」をしっかりと分析していれば、法解釈のコツのようなものが少しづつ身についてくると思います。そうすれば、初見の論点に対する判例・学説の理解のスピード・精度も向上していきますし、本番の現場思考型の問題でも、趣旨から論理的に解釈論を展開できるようになってくるはずです。
 ご自身の答案で展開されている論証がAのようになっていないかどうか、あるいは、教科書や判例で論点を読む際に、自分がきっちりとBのような論証ができるような「論理」の理解ができているかどうか、確認してみてください。

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規範の意味を理解する

大した話ではありませんが、要望もありましたので、
一部アップしておきます。


(1) 正確なあてはめ
採点方針・出題趣旨・ヒアリング・採点実感等からすると、新司法試験では、あてはめに多くの点数が振られていることが明らかです。したがって、正確なあてはめができることが合格に必要不可欠です。
正確なあてはめができるようになるために大事なことは、「規範の意味を理解する」ことであろうと思います。規範の意味が正確に理解できていれば、事実のピックアップ・評価共に、最低限のことはできます。再現答案を分析した限りでは、それで合格ラインには達すると思われます。不合格になるのは、あてはめで何をするのかが理解できておらず、内容が間違ってしまっている答案です。
あてはめが正確であるということを超えて、あてはめの巧拙という点は、合否の分水嶺ではなく、上位合格かどうかの分水嶺にすぎないと思われます。上手なあてはめが出来るに越したことはありませんが、まずは規範の意味を正確に捉えるところから初めて、それが十分修得できてから、より巧みなあてはめができるように、段階的に学習していくと良いと思います。抽象的に言っても理解しがたいと思いますので、以下いくつか具体例を踏まえながら説明します。
(2) 具体例
ア 憲法(違憲審査基準-手段審査)
手段審査の内容は、①適合性、②必要性(、③均衡性)です 。①は、当該法律の手段が目的達成に役立つかどうかということで、②は、当該法律の手段と同程度以上に目的を達成でき、かつ、当該法律よりも権利侵害の程度の低い他の手段があるかどうか、ということです。そして、中間審査以上のいわゆる厳格な審査の場合にのみ、②の審査も行うことになります。
 このことを理解していれば、手段審査では、①当該法律が目的達成に役に立つのかどうかと、場合によっては、②当該法律と同程度以上に目的達成できるより権利侵害の少ない手段がないかどうかを論じればよいことがわかります。そうなれば、①では、当該法律が目的達成に役立つかどうかに関わる事実にフォーカスして問題文を見ていくことができますし、②では、権利侵害の程度に関わる事実にフォーカスして問題文を見ていくことができます。それによって、意味を持たない事実に惑わされることなく、意味を持つ事実だけをピックアップしやすくなるでしょう。
事実をピックアップしたら、次は評価です。①では、適合性とは要は役に立つかどうかだと規範の意味が理解できていれば、それぞれの事実が目的達成に役立つ・役立たないのどっちを基礎付けるのか、その理由を考えて、それを書けばよいということがわかります。その理由がいわゆる「評価」になります。ここから、「評価」は、規範の意味が理解できていれば、やりやすいことがわかると思います。

イ 民法・会社法(規範的要件)
民事系は刑事系や憲法に比べればあてはめはそれほど重くないようです。例えば、民法96条3項のように、「第三者」が取消し前の第三者、と解釈できてしまえば、後は取消し前に登場したかどうかという直接的な事実だけであてはめが済んでしまうような論点が多いからでしょう。民事系のあてはめで問題になってくるのは、このような直接的なあてはめができない、過失などの規範的要件です。
 そこで、それぞれの規範的要件の意味をしっかりと理解して、評価根拠事実・評価障害事実をピックアップし、評価していくことになります。例えば、民法192条の即時取得の「過失」では、①調査確認義務の存在と②調査確認義務の懈怠 を論じるとしっかり理解しておけば、①②を基礎付けそうな事実がないか、という目で問題文を分析できます。事実がピックアップできたら、その事実がなぜ調査確認義務の存在を基礎付けるのか、なぜ調査確認義務の懈怠を基礎付けるのか、その理由を考えて書けばよい、ということになります。
 民法では、他に、背信的悪意者の背信性、表見代理の正当な理由など、会社法では、職務懈怠や過失など、様々な規範的要件があります。規範的要件を見つけたら、その都度、その内容をしっかりと理解しておくとよいと思います。

ウ 刑法(共謀共同正犯)
刑法では、毎年下位規範やメルクマールがある論点がメインの論点として出題されているという傾向があります。そこで、下位規範やメルクマールのある論点はしっかりと学習すること、その際、単に規範だけ覚えるのではなく、下位規範・メルクマールも覚えること、が重要になってきます。
 例えば、共謀共同正犯と幇助犯の区別は、正犯意思(自己の犯罪を行う意思)の有無によるというのが裁判例の立場です。そして、正犯意思の有無の判断に当たっては、①共謀者と実行行為者の関係、②犯行の動機、③共謀者と実行行為者間との意思疎通行為の経緯・態様・積極性、④実行行為以外の行為に加担している場合はその内容、⑤犯行前後の徴表行為の事情に犯罪の性質・内容などを考慮して判断するとされています 。このように確立したメルクマールがある場合には、これを覚えて、このメルクマールにあてはめながら、最終的な規範である正犯意思の有無を論じていくことになります。メルクマールを覚えておくことによって、①ないし⑤に関係ありそうな事実はどれか、という目で問題文を分析できますので、あてはめに必要な事実を洩れなくピックアップしやすくなると思います。

エ 刑事訴訟法(任意捜査の限界)
刑事訴訟法の捜査では、毎年比例原則のあてはめが聞かれています(任意捜査の限界、必要な処分)。任意捜査の限界を例にとってみましょう。規範は、「必要性、緊急性なども考慮したうえ、具体的状況のもとで相当と認められる限度において許容される」というものです。誰もが書ける規範だと思いますが、誰もがその意味を理解できているわけではないようです。この規範が、比例原則を根拠にしている ということが理解できていないと、この規範が比較衡量を行うものだ、ということが分からないまま、適当にあてはめてしまうことになります。そのため、たとえば、相当性では、手段が社会的に相当だといったようなマジックワード的な表現でお茶を濁して終わってしまうということになってしまいかねません。
 これに対して、この規範が比例原則を根拠としており、したがって、当該行為により得られる捜査上の利益と対象者の被侵害利益との利益衡量を、必要性緊急性という指標を使いつつ評価するものだ、ということが理解できていれば、まず、①当該行為により得られる捜査上の利益に関わる事実を探し、次に、②当該行為により失われる対象者の利益に関わる事実を探せばよい、ということがわかります。そして、事実をピックアップしたら、①その事実がどのような理由でどのくらい当該行為の利益を基礎付けるのか、②どのくらい失われる利益を基礎付けるのか、を論じ、両者を比較衡量すればよいとわかります。

(3) まとめ
このように、規範の意味が理解できていれば、少なくとも間違ったあてはめをやってしまうことはないし、最低限の事実はピックアップして、評価することできると思います。
なお、本番では、人並みなあてはめができればそれでさしあたり十分であろうと思われますので、試験中にあてはめにこだわり過ぎて時間を使いすぎないように注意するとよいと思います。

去年の今頃

漠然とした不安を抱えていたような記憶。

一通り勉強はしたけれど、頭に知識を叩き込めてはいない状態。
問題演習も、科目によっては相当長期間やっていなかったり、
そもそも十分な問題演習ができていない科目もあったりで、
事案分析力や答案構成力が著しく不十分だと現状把握してた。
だからといって論文の勉強!という訳にもいかなかった。
択一をやらなきゃしょうがない状態だったし。
だから、毎週毎週の新試過去問答練は苦しかったなぁ。
理想と現状との乖離具合に打ちひしがれる日々だったっけ。

おそらくみんなそうなんでしょうね。
傍からは

「余裕そうでいいねー」

とかなんとか言われたりすることもあったけど
自分自身は苦しくてしょうがなかった。
私から見て余裕そうな人も、きっと苦しかったんだろうと思う。

そんな苦しい日々だったけど、毎日少しは前進していくことはできていたんじゃないかな。
少なくとも一歩は進んでやろうという気持ちでやってた。

この時期に現状を把握する作業は、自分の能力のなさに直面することになって
とても苦しいものだけど、その作業をすることによって着実に一歩進めることになる。

苦しいけどやるしかない。
「海辺のカフカ」の冒頭の砂嵐の話のようなものです。


そして、終わってみて実感するけど、実は時間はまだまだあるんです。
この時期のポイントは、

やることを減らす

ことなんじゃないかなと今では思う。
最近はどんどん優良な教材が増えてきた。
けど、本当に必要なものはそう増えてないと思う。
今の自分にとって本当に必要なものは何か。
優先順位をつけて、残り時間をにらみつつ
勇気をもって「やらない」決断をすることが大事です。

私が「やらない」決断をしたのは、例えば

・予備校の答練(3年秋・3年年明け)
・基本書の通読(3年冬・一部例外有り)
・事例研究民事法(3年2月)

などなど。他にもいっぱいあります。
毎回本当に悩んだ末の決断でした。
今後は、もっとパッパと捨てていける勇気を身に付けたい。

勉強の工夫シリーズその1

ちょっとした勉強の工夫について、思い出したことを思い出したときにつづっておこうと思います。


1.説明できるようにする

基本書を読んだり、判例を読んだりするときの工夫です。ただ読んでそれだけにするのではなく、基本書で趣旨や論点を学んだら、それを誰かに説明できるようになっているかチェックをしていました。理解できているなら説明できるし、説明できなければ理解できていないことが分かります。さらに、説明作業をすることで、記憶の定着も図れます。
 これは葉玉先生のブログでも書かれていることですね。また、京大の松岡教授も「他人への説明も非常に有効」とされています(http://www.matsuoka.law.kyoto-u.ac.jp/SemiMaterials/how2ans.htm)。
 当たり前ですが、実際に人の前で説明していたわけではありません。ブツブツやっていただけです。自習室では声にださないように注意しましょう。通報されます。


2.付箋の利用

どうしても覚えなければならないことを確実に覚えたいときには、付箋に内容を書いて机の前の壁に貼っておきました。こうすることで、いつでも壁を見ればそこに自分にとって今確実に覚えなければならない情報にアクセスできるようにしておきました。
 たとえば、「任意捜査の限界は比例原則」のような超基本的な知識であり、当たり前の情報でも、1回その情報に触れた後次に触れるまでのスパンが長ければ、なかなか定着しません。そして、ローに在学していると、普段大量の情報に次々と接していかなければならなくなるので、なかなかそのスパンを短くできなかったりします。そこで、最低限確実に頭に叩き込みたいことだけでも、毎日のようにアクセスできるようにしておいたわけです。夜寝る前やちょっとした休憩時間、食事の時などにながめていました。
 


※ 前回の択一の記事に補足を入れておきました。

具体的な択一対策

1.はじめに

私の択一の得点は、300点程度(50位くらい)でした。今回は、私が3年秋から行った本格的な択一対策について書きたいと思います。ただ、この本格的な択一対策「だけ」で本番の点数が取れたわけではないということに注意してください。3年秋以前までに、「日常的学習」で書いたような学習を積み重ねてきたことが前提になっています。よく択一対策は何をしたかなどと質問をされるのですが、そこで回答する「肢別本を解いた」といったことだけが択一の点数を支えているわけではないのです。それまでの積み重ね(基本書読み、判例読み、論文問題演習)と本格的な択一対策とがあいまって本番の点数に結実しています。


2.総論

(1) 肢別本
 
科目別の対策の前に、全体的な話からしていきたいと思います。私の本格的な択一対策の中心は、肢別本を解くことでした。その理由は、アウトプットが記憶の定着に良いこと、新試の過去問だけでは数が足りないこと、沢山の問題をこなすことで論文用の知識のインプットも兼ねられること、でした。具体的なやり方は、以前紹介した司法試験の思い出のイチローさんの方法とほぼ同様です。一日に500肢を目標に解いていきました。そして、1科目分の肢別本を解き終わったら、次の科目に行かないで、もう一度同じ科目の肢別本を解いてから次の科目へ移っていました。短期間にすばやく繰り返すのが記憶の定着によいからです。これは非常に重要なポイントだと思います。そして、二回連続で理由付きで正解できた肢は年内にはもう解かないこととし、間違えた肢あるいは理由を正確に言えなかった肢のみを3度4度と正解できるようになるまで繰り返していきました。使用教材は、肢別本のみです。刑事系のみ、新司法試験の過去問だけを用いていました。本試と傾向が異なるなどと、評判が良くなかったからです。年内には、全体を2回、間違えた肢についてはさらに1~2回解きました。それでもまだ間違ったり理由を正確にいえない肢については、付箋を貼っておきました。年明け後は、2月にローの期末試験がわるまではTKCの復習程度に留め、2月以降に、本番までに全ての問題ををゆっくりとしたペースで1回して、さらにそれとは別個に、いまだ間違う問題について集中的に繰り返すこととしました。そこで付箋の貼ってある肢が理由を言って(議論を組み立てられて)解ければ付箋を外していました。択一試験の前日には、後述のノートと、付箋の貼ってある肢を解いていました。なお、日常的学習と同じように、肢別本の解説はあまり読まないで、基本書・判例集に戻っていました。
 現実には、秋には講義の予習復習もあり、なかなか500肢はできませんでした(100肢程度しかできない日も多々ありました)。それでも、1週間程度でなんとか一科目を2週はさせていました(民法を除く)。年明け以降はペースが遅すぎて(1日50肢程度だったろうか)、本番までに全てを回せませんでした。そこで、もう出なさそうな問題(大昔にでただけの肢)などは捨てたりして解く問題を減らすなどの工夫をしていました。


(2) 考える

肢別本を解く際のポイントは、記憶に頼らないことです。単純な条文知識問題などは記憶に頼らざるを得ないのですが、そうでない問題では、極力「考える」作業を怠らないように注意していました。その肢に対して論文問題として回答するなら自分はどこから議論を出発させてどう論じるかを考えていたわけです。判例や通説の規範や結論を知っていれば、その知識・記憶で解けてしまう肢でも、頭の中で自分で一から議論を組み立てていました。ここで上手く議論を組み立てられなければ、答えが分かっているときであっても、基本書や判例集に戻っていました(これが論文対策とのリンクになります)。記憶で解く単純な知識問題でも、その出題趣旨は何なのか、なぜこの知識が聞きたいのかといったことを意識していました。


(3) 間違ったら

間違ったときには、「正解は何か」ではなく、「なぜ間違ったのか」を分析していました。そうすることで、自分の陥りやすい誤った思考方法を発見し、それを修正して、次から正解できるようにすることができるからです。正解だけを追っていると思考方法の修正はなかなかできません。本番では知識に頼らず思考して解くことになるので、自分の謝った思考方法を修正しておくのはとても大切なことではないかと感じています。旧司法試験時代なかなか択一の点が上がらなかったのは、勉強不足もありますが、「正解は何か」ばかりに気を取られていたのが原因だったと今では思っています。


(4) 基本書&判例&六法とのリンク

新・旧司法試験で出題された肢については、その出題された部分について、基本書・判例集・六法にそれと分かる形でチェックを入れておきました。そうすることで、基本書・判例・六法を読むときに、ここは択一で聞かれる部分なんだと意識して読めるからです。とりわけ、憲法では、どのような部分が出題されているのか、なぜそこが効かれたのか、その憲法的な意味はなんなのか、というところを分析しておくと、そのような類のことを聞いてくるのであれば、いまだ出題されていないこの判例ならここを聞いてくるだろうというような見切りができるようになってきます。そうなると、細かいことを聞いて来ているように感じる憲法も決して細かいことを聞いてきているわけではないことが分かってきて、大分択一が楽になりました。
 六法については、条文素読みをするときに、およそ聞かれない条文などを読んでも試験上は無意味なので、肢別本・模試も含めて、出題された条文の出題された部分にマーカーを入れて、その部分とそれに関連する部分だけ読むようにしていました。さらに、問題を解いたときに、問題を解くのに最低限必要な条文知識の書き込みをしたりしておきました。この書き込みによって、六法が「オリジナル択一六法」になるイメージです(なお判例は百選を読んでいたので、判例を書き込んだりはしませんでした。判例六法は判例があるせいで条文と条文が離れすぎてしまい条文の位置イメージが作れないのがいやで使いませんでした。しかし、後で判例六法の方が択一対策には便利だったろうなとちょっと後悔しました)。


(5) オリジナル弱点つぶしノート

勉強を進めていくと、何度やっても間違う問題がでてきます(私には8回連続不正解という肢別本を引き裂きたくなるような肢もありました)。そういう問題については、別個にノートを作成しておいて、夜寝る前やちょっとした空き時間に目を通したりしていました。
 たとえば、(自分にとっては)よく似ている(ように思えてしまう)けど微妙に違うもので、その区別がつかなくなってしまうような問題について、ノートに整理してまとめておいたりしました。


(6) 条文素読み

新試択一で高得点を取る為には不可欠だと思います。私が素読みを行ったのは、憲法、行政法、民訴法、刑法(ごく一部)、刑訴法です。素読みの時間を普段の学習時間の中に組み込むのはなかなか難しいのですが、模試の前日、模試の休憩時間、試験の前日、試験の休憩時間、だけでも相当な回数がこなせますので、それだけでもよいのでやっておくと効果が出ると思います。


(7) 評価
2週間に一度程度、択一の模試の問題などを用いて、勉強の成果をチェックし、勉強方法が効果的かどうかをチェックしていました。効果が出ていないようであれば、別の勉強方法を考え出して随時修正をしていきました。その過程は昨年秋あたりの記事をご覧になっていただくと生々しい様子がうかがえると思います。
 受験生の中には、9月のTKC以降で択一の問題を解いて点数を出すのは次の12月のTKC、という人が多いようですが、3ヶ月もの間、勉強の成果を評価できないと、その間にとっていた手法が効果的なものでない場合、3ヶ月を台無しにすることになってしまいかねません。可及的に勉強成果のチェックを行ったほうがよいように思います。


3.各論-科目別対策

(1) 憲法

① 憲法総論
芦部憲法の記述そのままの肢があったりと、芦部憲法が効果的に感じられたので直前の3月~4月あたりに読んだ。

② 人権
基本的な憲法論、判例の2本立て。判例は百選でも憲法判例でも足りないので、憲法判例をメインに百選で補完し、さらに重要判例についてはTKCで打ち出して全文を読んだ。択一で聞かれるのは、裁判所の下した憲法論的に意味のある判断部分なのだが、百選や憲法判例で引用されている部分以外にもそのような判断があったりするのが困る。前述した問われているところから、どのような部分を問うてくるのかをつかんでいって、その目で判例集読み込みをすると効果的。

③ 統治
条文+基本的な解釈論+重要判例の3本立て。肢別本は細かすぎるので、本試の過去問の傾向からして出なさそうな部分はどんどんカットしていっていいと思う。そのためにも、まずは過去問だけ何度か解いて傾向をつかむといいと感じた。基本書は芦部ではやや物足りないが、4人組だと多すぎるので、芦部ベースで4人組を辞書的に使った。



(2) 行政法

① 条文
行政事件訴訟法だけでなく、行政不服審査法、情報公開法、個人情報保護法、国賠法、行手法、行政代執行法など出題されている法律は素読みした。模試の度に素読みしていた。とにかく条文が大事。条文を読むときには、主体・客体・要件・効果を意識して読み込んだ。

② 判例
結論と規範で回答できるものが殆ど。CBで基本的には足りる。加えて、肢別本や模試で出題された判例をおさえる。

③ 基本書
桜井橋本を通読したことも大分択一に役に立った(判例が相当な数整理されているので)。


(3) 民法

① 択一六法
この科目だけ択一六法を使った。肢別本を解いて、択一六法をチェックしていく形。平成20年度2位のsunさんと同じようなやり方。択一六法で親族・相続の条文を確認しておいたことは、今年の論文問題にとても効果的だった。

② 肢別本
新司法試験は、旧司法試験と異なり、細かい解釈問題は出題されていない。なので、旧試の細かい肢はやらなくてよいと思う(その代わり、新試は条文知識が出るので、択一六法で条文をよく読んでおくことが肝要)。

③ 判例
それほど出題されるわけではないが、百選レベルの判例は出題されたら確実に正解できるように百選を読んでおいた。みんな百選は読んでいるので、みんなが解けるから。8割目指そうと思ったら、みんなが解ける問題を外すわけにはいかない。なので、百選の重要性があまり高いとは思えなかったが、百選を聞かれて答えられなかったら法律家失格くらいの意気込みで読んでおいた。

④ 親族・相続
10点分ある上、論文にも出題されるので、択一をしっかり勉強しておく必要がある。基本書を読むのは大変なのdえ、択一六法で基本的な条文の趣旨と条文操作を確認しておいた。それが今年の論文に活きたのは前述の通り。

⑤ 要件事実
ロースクールの講義を必死に頑張ったおかげで、特にそれ以降勉強しなくても択一は解けた。基本的な知識と、要件事実論の基本的な考え方を修得するのが大事。


(4) 会社法

① 葉玉100問
問題数がやたら多いのに本試験と傾向が違うのでイマイチ効率が悪い。
会社法は出題数が少ないのに、範囲が膨大で分量が多いのでコスパが悪い。
範囲が膨大なので民法並みにガンガンすばやく回して短期間で繰り返さないと定着しない。

② 条文素読み
時間がなくてできなかった。論文対策としても、ある程度やっておけばよかったと思う。

③ 百選
全部読んだ。今年は判例が殆ど聞かれなかったが、やはり百選レベルを間違うようでは法律家失格くらいの意気込みが必要だと思う。


(5) 商法・手形・小切手法

① 過去問
② 模試

この2つだけ。コスパの問題。
本番は全くわからず勘で選んで6点取った。
そんなもの。


(6) 民訴法

① 肢別本
1年生の頃から何度も繰り返した。一番回した回数が多いと思う。結果得点率も一番いいので、回した回数はやはり重要。過去問ではない予備校作成問題は変てこなものがあるので、意味がわからなかったらスルーするのもあり。

② 判例
百選を完璧にするのは他の科目と同様。ロースクール民訴の判例も、肢別本や模試に出題されている限度である程度おさえておいた。

③ 条文
手続周りは条文が良く聞かれるので、前述したような手法で六法を「オリジナル択一六法」化させて六法を読み込む必要がある。肢別本と模試で問われた条文を抑えておけば十分な点数が取れると思う。


(7) 刑法

① 総論
各説の代表的な理由と代表的な批判を1個ずつと、事例に対するあてはめの帰結を知っていれば解ける(各論も同じ)。
パズル形式が多いので、あまり肢別本が役に立たず、実際に解く訓練が必要。
解き方のノウハウがあるので、それを自分でつかむなり人から聞くなりするとよい(説明しづらいのでブログでは書けない)。

量刑、執行猶予などが毎年出題されているので、そこだけ条文をしっかり読んでおく。ここだけ肢別本をやっておいた。


② 各論
とにかく構成要件をおさえる。あまり百選が役に立たない(百選以外が出るから)。山口青や西田など基本書で判例をチェックしていた方がよいと思う(よく出題されている罪については)。
賄賂罪・放火罪は条文をよく読んでおく。


⇒ 総論各論ともに「あてはめ」ができることが重要。旧試験のような細かい学説の対立はほぼ不要。


(8) 刑事訴訟法

① 判例
あまり出ないが、刑訴は憲法にならんで論文で判例が重要な科目でもあるので、できる限り全部読んでおく。また、百選に載っていない判例が聞かれる部分もある(訴因のところなど)。そういう分野については、基本書などでどのような判例があるか知っておく必要がある。

② 条文
判例の代わりにこちらが多い。規則も出る(反対尋問など)ので、そこをしっかり勉強する。

③ 新しい制度
毎年のように新しい制度について聞いてくるので、新しい制度について知っておくとよい。

④ 類似問題・特定の範囲
同じような問題が何度もでる傾向にあるので、過去問をまずしっかり潰すのが重要。
また、出るところと出ないところがハッキリしているので、無闇に基本書通読などをするより、過去問を検討してでている分野だけ知識をおさえるといったようにしたほうが効果的。



4.基本的な解き方

① 確実に切れる肢を切る
確実に分かる足についてだけ○か×をつける。


② 回答
確実に切れた肢だけで答えがでればそれでOK。答えが出ず、肢が複数残っているようなことがあれば、あとは勘。

⇒ ポイントは、確実に切れる肢だけしるしをつけること。不確実な肢の不確実な○×を念頭に検討してしまうと間違いやすくなる。

⇒ 刑法のパズル問題などは解くのに慣れも必要。そのような問題は肢別本でなく、実際の出題形式で解いて練習する。


5.終わりに

ポイントは、短時間・短期間に何度も繰り返す、ということだと思います。何度やっても間違う問題があるのなら、正解できるようになるまで20回でも30回でも繰り返すしかありません。苦しい地道な作業ですが、条文に慣れ親しむチャンスでもあります。私は、択一の勉強を通じて、条文を読み込み、条文に慣れ親しむことができました。論文試験で重要な、条文を起点とした解釈という思考を自分の中で常識化するにあたっても、択一の勉強で条文に慣れ親しんだことは有益だったと感じています。



※ 補足

・論理問題は、それまでに基本書・判例をしっかり読んだり、論文問題演習をしておくことが肝要。肢別本は理解できているかどうかの確認をしたり、穴を発見したりするために使うのであって、肢別本で勉強するというものではないと思う。

・重判は、平成19~平成22を通読。憲法のみ平成18年にも目を通した。憲法、刑訴は重判からよく出ている。しかし、コスパは良くないので、余裕のある人向けではないかと思う。

・模試の問題も間違ったものは、「なぜ間違ったか」の視点で復習をしておいた。しかし、TKCはあまりに本試験の傾向からずれているので、あまり復習する意味がないような気がする。
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