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問題集について

民事法をやっているということで、
民事法についての感想を求められたりするのですが、
ちょうどいい機会なので、問題集の選択についての私見を述べてみたいと思います。

私見は、

相対評価の試験において、受験生の大半がやってる問題集は絶対やる
問題集の良し悪しは選択の基準にならない

ということです。

個人的には、民事法は、それほどよいとは思いません。
問題自体、あんまりよいものではないです。
旧司法試験の方がはるかに良問だと思います。
佐久間先生の教科書の設例などと何が違うんだ、と思ってしまいます。
解説も、よいものはなかなかよいですが、
ダメなものはもう読む人のことを全く考えてないです。
本の趣旨をわかってるのか疑ってしまいます。
問題文の事実を全然評価しないで法律論において自説を披露したあげく、
問題への一応の回答すら示していなかったり、
問いにこたえてすらいないものもあります。

でも、これを多くの受験生がやるわけです。
こういう問題にはこういう論点があって、こういう議論がある、というのを押さえてくるわけです。
それを自分だけ知らない、というのはそれだけで不利なんです。
だとしたら、やるしかないんだと思います。

事例研究憲法なんかは、正直どうにもならないような解説になってるところがいっぱいあります。
率直に言って、何を考えてこんな解説書いたんだろう、
こんなもの世に出して恥を書くと思わなかったのか?
って思います。
でも、これを受験生の大半がやるのであれば、自分もやらなきゃダメなんです。

相対評価だから。

民事法は、まだ問いに答えてないとか、あてはめがないとかで、有害とまではいえませんが
事例研究憲法はあまりにも抽象的論の空中戦をやってるところがあって、
これでは相当な実力者じゃないと誤解してしまうだろうというような点がいっぱいあります。
抽象的な憲法論を具体化させるのが解説の仕事なんじゃないでしょうか。
手抜きなのか、執筆者にその程度の力しかないのか…。

という訳なので、ダメな問題集であろうと、大半の受験生が使用しているなら
受験戦略上は、使わざるを得ないわけですが、
その科目の実力者とゼミを組むとか、先生に質問するとかしないと逆効果になる可能性があります。

その点にだけは気をつけて、問題集をこなしていくしかないんだと思います。

要は、みんなが知っていることできることは自分もできなきゃダメなわけです、
相対評価の試験では。
だから、みんなが解ける問題は解けなきゃダメなわけです。
だから、みんなが解いてる問題は自分も解かなきゃダメなわけです。
ただそれだけだと思います。
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憲法判例

初宿先生と戸松先生の青い判例集です。
262個と、百選よりも沢山判例が載っています。
引用量も百選より大体多いです。

しかし、解説はありません。
とはいえ、憲法百選は解説が役立たずなことが多いので
それは左程問題ではありません。

問題なのは、百選判例が載っていないことや、
引用の仕方が微妙におかしいことです。
せっかく数多く載せているのに、百選に搭載されている
しかも重要な判例が載っていないことの意味が分かりません。

それと、引用の仕方が微妙にへんてこな場合があります。
つまり、ある議論の主題、主語の部分がカットされていて、
何について論じているのか意味がわからないことがあったり(百選では引用されている)
なぜそこをカットするんだ、というような重要な説示が抜けていたり(百選では引用されている)
ちょっと困ったところのある判例集です。

補足意見や反対意見がいっぱい載っているのはよいのですが、
しかし、大事な意見がカットされていて、
他方、重要かな?というような意見が大量にのってたりします。
そして、その大事な意見は百選の方がきっちり載ってたりもします。


ということで、なかなか困ったちゃんな判例集です。
とはいえ、百選よりはいっぱいのってるし、
引用量も多いので、
やはり、最終的にはこっちかな、という感じですね。
百選読んだ後にこの判例集を読んで、
微妙に透けているところを補うのもいいかもしれません。

債権各論Ⅰ 契約法・事務管理・不当利得 潮見佳男

遂に百選の編者になった潮見先生の債権各論の教科書です。
潮見先生と言えば、履行障害などの潮見語に代表されるような潮見ワールドで有名ですが、
この本は、潮見ワールドはあまり展開されておらず、
民法の基本的な発想の説明に徹しており、判例通説の説明がきっちりされています。

そのため、民法の基本的な考え方を修得するにはとてもよい本だと思います。
しかも、理解しやすさが工夫されており、口語体であることもあって、
とても読みやすいです。
読みやすさでは、分かりやすさを重視している内田先生の本も負けていませんが、
内田先生は分かりやすさを重視しすぎたせいか、法律論の部分に、答案ではかけないような
日常的な言葉使いが出てきているのに対して、
潮見先生の本は、分かりやすさを維持しながら、法律論では法律用語を使っており、
論証にそのままつかえる記述になっているところもありがたいです。

本書は、性質上、網羅性には欠けており、基本的には簡潔な説明がなされていますが、
重要な論点(瑕疵担保、賃貸人の交代、信頼関係破壊の法理など)については、
相当な分量を割いて丁寧に説明されており、
他の教科書に比べて優れているくらいです。
そのため、些細な論点について学ぶことには不向きですが、
重要論点をしっかりと理解するには非常に有益です。

最初は、この潮見先生の教科書を何度も読んで、
ここに書かれていることが
「そんなの当たり前だよ!」
って思えるくらいになってから、
内田先生や山本先生の力を借りて論点をつぶしていけばよいと思います。

新会社法100問

新会社法100問をすべて解き終わりました。
一昨年には購入してちまちまやっていたのですが
ようやく全部終わらせることが出来ました。

この本の評判はまちまちですが、
個人的には、他の問題集よりも、
まずはこれをやるべきだと思います。

理由(長所)は、
①これ一冊で、会社法の基本をおおよそ修得できる
②教科書では分かりにくい部分がすっきり整理されていて分かりやすい
③問題提起が丁寧で参考になる
④論点抽出がしっかりしているので、事例解析能力の向上に繋がる
⑤論証も相当に丁寧
⑥短答問題数が非常に多い
の6点です。

弱点としては
①解説がない
②答案としては冗長である
③立案担当者の見解である
④誤植が目に付く
といったところでしょうか。

まず、長所の①ですが、
100問もあるので、試験的に大事な部分はほぼ網羅されていると感じました。
落ちている部分もないわけではありませんが、
完璧な本などそもそもこの世には存在しません。
問題集としては極めて優れた網羅性だと思います。

次に②ですが、
例えば、剰余金の配当など、条文がごちゃごちゃしていて
それゆえ教科書もごちゃごちゃしていて、
読んでいるだけでめまいが思想になってくるような会社法ならではの
複雑なシステムの解説も、この本ではすっきりと簡潔に書かれていて
非常に分かりやすいです。

また、③④についていうと、
問題の抽出、その提起の仕方が優れていると思います。
問題を見て思考を展開していく思考プロセスが大事だと
このブログではよく書きなぐっていますが、
それがきっちりとされていてよいです。
思考プロセスの解説はありませんが、問題を見て、
解答をみれば、このような事案では、こういうところが
こういう風に問題となるんだな、という事例解析パターンを修得できると思います。
とりわけ、攻撃できそうなポイントを徹底してさらっているところがよいです。
会社法は結構ワンパターンなので、
この本で鍛えれば、殆どの問題に対処できてしまう気がします。

⑤ですが、
論証が相当に丁寧です。
基本書の記述よりよほど丁寧なことが多いです。


そして、⑥ですが、
担当問題数が辰巳の肢別本よりもはるかに多くて網羅的です。
そして、さすがに立案担当者が作っただけあって、
新会社法の重要な改正ポイントをきっちりとピックアップしてあります。
細かい部分でも取り上げられているので、
短答対策として非常に有益だと思います。

これに対して、弱点ですが、
まず、①解説がないことは、それほど気にはならないと思います。
なぜなら、問題提起が丁寧ですし、
法律論については、各自の基本書で調べることが出来るからです。

次に、②ですが、
これは、かえって、各自が答案にするときに
どこまで書くべきなのか、情報の取捨選択をする訓練になります。
太字や赤字を参考にそれを行えるとよいと思います。

おそらく一番の懸念は③だと思います。
しかし、立案担当者の見解だから評価が低くなるわけではありませんし、
立案担当者の見解に不満ならば、その時にこそ江頭先生の力を借りればよいだけです。
ですから、この点もさほど問題にはならないと思います。
どこが立案担当者の見解か分からない、ということもあろうかと思いますが、
立案担当者の見解を一部で取ったからといって特に問題が生じることはないと思います。
刑法のように、一部他説を採用したことで論理破綻が起こるおそれは
少なくとも司法試験のレベルにおいては、会社法ではないでしょう。
また、立案担当者の見解を知ることで、自説とする学説の立場の弱点を知り、
より説得的な論証ができるメリットもあると思います。

個人的には、立案担当者の見解かどうかよりも、
少し発展的な議論が足りていないと思うので、
そこの補充のほうが問題であると思います。
たとえば、江頭先生の教科書の注の部分に書かれているような議論であり、
かつ、商法判例集や百選に搭載されている裁判例のある議論などです。
これは判例集や江頭先生の本で補充する必要があると思います。

最期に誤植ですが、これはいたし方がないというしかないでしょう。
ネット上に誤植一覧データもありますから、
それをみて自分で修正するほかありません。
しかし、これも大した欠点ではないでしょう。


ということで、弱点もありますが、それをはるかに上回る長所があるので、
やはり、この本は秀逸だと思います。
一度会社法全体をざーっとまわしたら、
あとはこの本と判例集を読み込めばそれで十分で、
さらに余力があれば、江頭先生の重要部分を拾い読みしておけばよいと思います。
会社法事例演習教材は解説がないので自習はできませんし、
ゼミを組んだところで分からないものは分かりません。
ですから、まずは、こちらを徹底的にマスターすることが先決だと思います。
無理に背伸びをしても時間を浪費するだけです。






民法の基礎

今学期は「民法」の講義がありません。
しかし、だからといってこの法律を勉強しないわけにはいかないので
民法の基本書の通読をはじめました。

今は、佐久間毅先生の、「民法の基礎」で物権総論を読んでいます。
私のロースクールのカリキュラムでは物権総論が非常に手抜きだったからです。
今後は、債権総論(中田裕康)、債権各論(潮見佳男)、不法行為(吉村良一)と読んでいく予定。

現在開始3日目で、189pまで読了。


ここでちょっと、佐久間民法の話を。
この本は、ケースメソッドなので、もしかしたら通読向きではないのかもしれません。
しかし、それがマイナスであったとしても、やはりこの本はとてもよいと思います。

まず、①説明が丁寧です。
次に、②判例理論の根拠を詳細に提示してくれています。
さらに、③学説も相当に説明されています。
最期に、④事例においては、問題の所在が提示されています。
そこでは、その問題を考えていく上での思考プロセスが書かれています。

私がこの本が良いと思う理由は上記①ないし④ですが、
この本の真価は、②と④だと思っています。

まず②については、例えば、内田先生の本は、今でもとてもよい本だと思いますが、
判例の説明がやや淡白であることが多いです。
判例百選などで補充すればよいのかもしれませんが、百選の解説にはあたりはずれがあり、
ときには有害なものさえ混じっています。
したがって、百選の解説を読むという手段はリスキーであり、しかも、非効率的です。
その点、佐久間先生の本では、判旨を読んだだけでは分からない判例理論の根拠が
きちんと説明されています。
(もちろん、これも佐久間先生の判例の理解に過ぎない、ともいいうるのですが、
百選の解説よりはマシです。)

次に、④については、この思考プロセスを修得することができるかどうかで
民法を駆使できるかどうかが決ってくると思うので、非常に重要な要素だと思います。
やはり、問題に対して思考を展開していく道筋がわからないと、
知識があってもそれを上手く運用できません。
たとえば、予備校の論文問題集や過去問集は、
「この問題には~の論点がある、そして、その論点についての判例・学説は~。あてはめは~」
といった解説に終始しています。
しかし、現実に重要なのは、その論点を抽出しその問題の所在を示すまで思考を展開していくプロセスだと思いますし、
それができれば、それこそ後は判例・学説を叩き込んでやればいいだけで容易です。
本番で必ず3割は出てくる未知の議論(葉玉先生のブログより)に対処できるかどうかも、
基本的な知識と、その知識から問題を見て、
そこから思考を展開していくプロセスが身についているかどうかで決ってくると思います。
そうだとすると、思考プロセスの解説がないと困るのです。
この意味では、予備校の一般的な論文問題集は役立たずだと思います。

私は答練などで、民法では今一高得点を取れなかったのですが、
それはおそらくこの「問題に対する思考プロセス」が身についていなかったからだと考えました。
そこで、この④に最大の魅力を見出して、佐久間先生の本を使用することにしました。
そして、結果として、ロースクールの試験では高い成績をとることができましたから、
今のところ、このアプローチは間違っていなかったと思います。

ちなみに、予備校の過去問集であっても、
辰巳のLIVEシリーズの憲法、民法、民訴は思考プロセスが学べます。
旧司の問題ですので、新司とは形式が違いますが、
日々の学習に使う分には非常に有用だと思います。

と、今はこんな風に思ってます。
新司法試験でどうなるかはわかりませんが。




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