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具体的な択一対策

1.はじめに

私の択一の得点は、300点程度(50位くらい)でした。今回は、私が3年秋から行った本格的な択一対策について書きたいと思います。ただ、この本格的な択一対策「だけ」で本番の点数が取れたわけではないということに注意してください。3年秋以前までに、「日常的学習」で書いたような学習を積み重ねてきたことが前提になっています。よく択一対策は何をしたかなどと質問をされるのですが、そこで回答する「肢別本を解いた」といったことだけが択一の点数を支えているわけではないのです。それまでの積み重ね(基本書読み、判例読み、論文問題演習)と本格的な択一対策とがあいまって本番の点数に結実しています。


2.総論

(1) 肢別本
 
科目別の対策の前に、全体的な話からしていきたいと思います。私の本格的な択一対策の中心は、肢別本を解くことでした。その理由は、アウトプットが記憶の定着に良いこと、新試の過去問だけでは数が足りないこと、沢山の問題をこなすことで論文用の知識のインプットも兼ねられること、でした。具体的なやり方は、以前紹介した司法試験の思い出のイチローさんの方法とほぼ同様です。一日に500肢を目標に解いていきました。そして、1科目分の肢別本を解き終わったら、次の科目に行かないで、もう一度同じ科目の肢別本を解いてから次の科目へ移っていました。短期間にすばやく繰り返すのが記憶の定着によいからです。これは非常に重要なポイントだと思います。そして、二回連続で理由付きで正解できた肢は年内にはもう解かないこととし、間違えた肢あるいは理由を正確に言えなかった肢のみを3度4度と正解できるようになるまで繰り返していきました。使用教材は、肢別本のみです。刑事系のみ、新司法試験の過去問だけを用いていました。本試と傾向が異なるなどと、評判が良くなかったからです。年内には、全体を2回、間違えた肢についてはさらに1~2回解きました。それでもまだ間違ったり理由を正確にいえない肢については、付箋を貼っておきました。年明け後は、2月にローの期末試験がわるまではTKCの復習程度に留め、2月以降に、本番までに全ての問題ををゆっくりとしたペースで1回して、さらにそれとは別個に、いまだ間違う問題について集中的に繰り返すこととしました。そこで付箋の貼ってある肢が理由を言って(議論を組み立てられて)解ければ付箋を外していました。択一試験の前日には、後述のノートと、付箋の貼ってある肢を解いていました。なお、日常的学習と同じように、肢別本の解説はあまり読まないで、基本書・判例集に戻っていました。
 現実には、秋には講義の予習復習もあり、なかなか500肢はできませんでした(100肢程度しかできない日も多々ありました)。それでも、1週間程度でなんとか一科目を2週はさせていました(民法を除く)。年明け以降はペースが遅すぎて(1日50肢程度だったろうか)、本番までに全てを回せませんでした。そこで、もう出なさそうな問題(大昔にでただけの肢)などは捨てたりして解く問題を減らすなどの工夫をしていました。


(2) 考える

肢別本を解く際のポイントは、記憶に頼らないことです。単純な条文知識問題などは記憶に頼らざるを得ないのですが、そうでない問題では、極力「考える」作業を怠らないように注意していました。その肢に対して論文問題として回答するなら自分はどこから議論を出発させてどう論じるかを考えていたわけです。判例や通説の規範や結論を知っていれば、その知識・記憶で解けてしまう肢でも、頭の中で自分で一から議論を組み立てていました。ここで上手く議論を組み立てられなければ、答えが分かっているときであっても、基本書や判例集に戻っていました(これが論文対策とのリンクになります)。記憶で解く単純な知識問題でも、その出題趣旨は何なのか、なぜこの知識が聞きたいのかといったことを意識していました。


(3) 間違ったら

間違ったときには、「正解は何か」ではなく、「なぜ間違ったのか」を分析していました。そうすることで、自分の陥りやすい誤った思考方法を発見し、それを修正して、次から正解できるようにすることができるからです。正解だけを追っていると思考方法の修正はなかなかできません。本番では知識に頼らず思考して解くことになるので、自分の謝った思考方法を修正しておくのはとても大切なことではないかと感じています。旧司法試験時代なかなか択一の点が上がらなかったのは、勉強不足もありますが、「正解は何か」ばかりに気を取られていたのが原因だったと今では思っています。


(4) 基本書&判例&六法とのリンク

新・旧司法試験で出題された肢については、その出題された部分について、基本書・判例集・六法にそれと分かる形でチェックを入れておきました。そうすることで、基本書・判例・六法を読むときに、ここは択一で聞かれる部分なんだと意識して読めるからです。とりわけ、憲法では、どのような部分が出題されているのか、なぜそこが効かれたのか、その憲法的な意味はなんなのか、というところを分析しておくと、そのような類のことを聞いてくるのであれば、いまだ出題されていないこの判例ならここを聞いてくるだろうというような見切りができるようになってきます。そうなると、細かいことを聞いて来ているように感じる憲法も決して細かいことを聞いてきているわけではないことが分かってきて、大分択一が楽になりました。
 六法については、条文素読みをするときに、およそ聞かれない条文などを読んでも試験上は無意味なので、肢別本・模試も含めて、出題された条文の出題された部分にマーカーを入れて、その部分とそれに関連する部分だけ読むようにしていました。さらに、問題を解いたときに、問題を解くのに最低限必要な条文知識の書き込みをしたりしておきました。この書き込みによって、六法が「オリジナル択一六法」になるイメージです(なお判例は百選を読んでいたので、判例を書き込んだりはしませんでした。判例六法は判例があるせいで条文と条文が離れすぎてしまい条文の位置イメージが作れないのがいやで使いませんでした。しかし、後で判例六法の方が択一対策には便利だったろうなとちょっと後悔しました)。


(5) オリジナル弱点つぶしノート

勉強を進めていくと、何度やっても間違う問題がでてきます(私には8回連続不正解という肢別本を引き裂きたくなるような肢もありました)。そういう問題については、別個にノートを作成しておいて、夜寝る前やちょっとした空き時間に目を通したりしていました。
 たとえば、(自分にとっては)よく似ている(ように思えてしまう)けど微妙に違うもので、その区別がつかなくなってしまうような問題について、ノートに整理してまとめておいたりしました。


(6) 条文素読み

新試択一で高得点を取る為には不可欠だと思います。私が素読みを行ったのは、憲法、行政法、民訴法、刑法(ごく一部)、刑訴法です。素読みの時間を普段の学習時間の中に組み込むのはなかなか難しいのですが、模試の前日、模試の休憩時間、試験の前日、試験の休憩時間、だけでも相当な回数がこなせますので、それだけでもよいのでやっておくと効果が出ると思います。


(7) 評価
2週間に一度程度、択一の模試の問題などを用いて、勉強の成果をチェックし、勉強方法が効果的かどうかをチェックしていました。効果が出ていないようであれば、別の勉強方法を考え出して随時修正をしていきました。その過程は昨年秋あたりの記事をご覧になっていただくと生々しい様子がうかがえると思います。
 受験生の中には、9月のTKC以降で択一の問題を解いて点数を出すのは次の12月のTKC、という人が多いようですが、3ヶ月もの間、勉強の成果を評価できないと、その間にとっていた手法が効果的なものでない場合、3ヶ月を台無しにすることになってしまいかねません。可及的に勉強成果のチェックを行ったほうがよいように思います。


3.各論-科目別対策

(1) 憲法

① 憲法総論
芦部憲法の記述そのままの肢があったりと、芦部憲法が効果的に感じられたので直前の3月~4月あたりに読んだ。

② 人権
基本的な憲法論、判例の2本立て。判例は百選でも憲法判例でも足りないので、憲法判例をメインに百選で補完し、さらに重要判例についてはTKCで打ち出して全文を読んだ。択一で聞かれるのは、裁判所の下した憲法論的に意味のある判断部分なのだが、百選や憲法判例で引用されている部分以外にもそのような判断があったりするのが困る。前述した問われているところから、どのような部分を問うてくるのかをつかんでいって、その目で判例集読み込みをすると効果的。

③ 統治
条文+基本的な解釈論+重要判例の3本立て。肢別本は細かすぎるので、本試の過去問の傾向からして出なさそうな部分はどんどんカットしていっていいと思う。そのためにも、まずは過去問だけ何度か解いて傾向をつかむといいと感じた。基本書は芦部ではやや物足りないが、4人組だと多すぎるので、芦部ベースで4人組を辞書的に使った。



(2) 行政法

① 条文
行政事件訴訟法だけでなく、行政不服審査法、情報公開法、個人情報保護法、国賠法、行手法、行政代執行法など出題されている法律は素読みした。模試の度に素読みしていた。とにかく条文が大事。条文を読むときには、主体・客体・要件・効果を意識して読み込んだ。

② 判例
結論と規範で回答できるものが殆ど。CBで基本的には足りる。加えて、肢別本や模試で出題された判例をおさえる。

③ 基本書
桜井橋本を通読したことも大分択一に役に立った(判例が相当な数整理されているので)。


(3) 民法

① 択一六法
この科目だけ択一六法を使った。肢別本を解いて、択一六法をチェックしていく形。平成20年度2位のsunさんと同じようなやり方。択一六法で親族・相続の条文を確認しておいたことは、今年の論文問題にとても効果的だった。

② 肢別本
新司法試験は、旧司法試験と異なり、細かい解釈問題は出題されていない。なので、旧試の細かい肢はやらなくてよいと思う(その代わり、新試は条文知識が出るので、択一六法で条文をよく読んでおくことが肝要)。

③ 判例
それほど出題されるわけではないが、百選レベルの判例は出題されたら確実に正解できるように百選を読んでおいた。みんな百選は読んでいるので、みんなが解けるから。8割目指そうと思ったら、みんなが解ける問題を外すわけにはいかない。なので、百選の重要性があまり高いとは思えなかったが、百選を聞かれて答えられなかったら法律家失格くらいの意気込みで読んでおいた。

④ 親族・相続
10点分ある上、論文にも出題されるので、択一をしっかり勉強しておく必要がある。基本書を読むのは大変なのdえ、択一六法で基本的な条文の趣旨と条文操作を確認しておいた。それが今年の論文に活きたのは前述の通り。

⑤ 要件事実
ロースクールの講義を必死に頑張ったおかげで、特にそれ以降勉強しなくても択一は解けた。基本的な知識と、要件事実論の基本的な考え方を修得するのが大事。


(4) 会社法

① 葉玉100問
問題数がやたら多いのに本試験と傾向が違うのでイマイチ効率が悪い。
会社法は出題数が少ないのに、範囲が膨大で分量が多いのでコスパが悪い。
範囲が膨大なので民法並みにガンガンすばやく回して短期間で繰り返さないと定着しない。

② 条文素読み
時間がなくてできなかった。論文対策としても、ある程度やっておけばよかったと思う。

③ 百選
全部読んだ。今年は判例が殆ど聞かれなかったが、やはり百選レベルを間違うようでは法律家失格くらいの意気込みが必要だと思う。


(5) 商法・手形・小切手法

① 過去問
② 模試

この2つだけ。コスパの問題。
本番は全くわからず勘で選んで6点取った。
そんなもの。


(6) 民訴法

① 肢別本
1年生の頃から何度も繰り返した。一番回した回数が多いと思う。結果得点率も一番いいので、回した回数はやはり重要。過去問ではない予備校作成問題は変てこなものがあるので、意味がわからなかったらスルーするのもあり。

② 判例
百選を完璧にするのは他の科目と同様。ロースクール民訴の判例も、肢別本や模試に出題されている限度である程度おさえておいた。

③ 条文
手続周りは条文が良く聞かれるので、前述したような手法で六法を「オリジナル択一六法」化させて六法を読み込む必要がある。肢別本と模試で問われた条文を抑えておけば十分な点数が取れると思う。


(7) 刑法

① 総論
各説の代表的な理由と代表的な批判を1個ずつと、事例に対するあてはめの帰結を知っていれば解ける(各論も同じ)。
パズル形式が多いので、あまり肢別本が役に立たず、実際に解く訓練が必要。
解き方のノウハウがあるので、それを自分でつかむなり人から聞くなりするとよい(説明しづらいのでブログでは書けない)。

量刑、執行猶予などが毎年出題されているので、そこだけ条文をしっかり読んでおく。ここだけ肢別本をやっておいた。


② 各論
とにかく構成要件をおさえる。あまり百選が役に立たない(百選以外が出るから)。山口青や西田など基本書で判例をチェックしていた方がよいと思う(よく出題されている罪については)。
賄賂罪・放火罪は条文をよく読んでおく。


⇒ 総論各論ともに「あてはめ」ができることが重要。旧試験のような細かい学説の対立はほぼ不要。


(8) 刑事訴訟法

① 判例
あまり出ないが、刑訴は憲法にならんで論文で判例が重要な科目でもあるので、できる限り全部読んでおく。また、百選に載っていない判例が聞かれる部分もある(訴因のところなど)。そういう分野については、基本書などでどのような判例があるか知っておく必要がある。

② 条文
判例の代わりにこちらが多い。規則も出る(反対尋問など)ので、そこをしっかり勉強する。

③ 新しい制度
毎年のように新しい制度について聞いてくるので、新しい制度について知っておくとよい。

④ 類似問題・特定の範囲
同じような問題が何度もでる傾向にあるので、過去問をまずしっかり潰すのが重要。
また、出るところと出ないところがハッキリしているので、無闇に基本書通読などをするより、過去問を検討してでている分野だけ知識をおさえるといったようにしたほうが効果的。



4.基本的な解き方

① 確実に切れる肢を切る
確実に分かる足についてだけ○か×をつける。


② 回答
確実に切れた肢だけで答えがでればそれでOK。答えが出ず、肢が複数残っているようなことがあれば、あとは勘。

⇒ ポイントは、確実に切れる肢だけしるしをつけること。不確実な肢の不確実な○×を念頭に検討してしまうと間違いやすくなる。

⇒ 刑法のパズル問題などは解くのに慣れも必要。そのような問題は肢別本でなく、実際の出題形式で解いて練習する。


5.終わりに

ポイントは、短時間・短期間に何度も繰り返す、ということだと思います。何度やっても間違う問題があるのなら、正解できるようになるまで20回でも30回でも繰り返すしかありません。苦しい地道な作業ですが、条文に慣れ親しむチャンスでもあります。私は、択一の勉強を通じて、条文を読み込み、条文に慣れ親しむことができました。論文試験で重要な、条文を起点とした解釈という思考を自分の中で常識化するにあたっても、択一の勉強で条文に慣れ親しんだことは有益だったと感じています。



※ 補足

・論理問題は、それまでに基本書・判例をしっかり読んだり、論文問題演習をしておくことが肝要。肢別本は理解できているかどうかの確認をしたり、穴を発見したりするために使うのであって、肢別本で勉強するというものではないと思う。

・重判は、平成19~平成22を通読。憲法のみ平成18年にも目を通した。憲法、刑訴は重判からよく出ている。しかし、コスパは良くないので、余裕のある人向けではないかと思う。

・模試の問題も間違ったものは、「なぜ間違ったか」の視点で復習をしておいた。しかし、TKCはあまりに本試験の傾向からずれているので、あまり復習する意味がないような気がする。
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comment

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はじめまして

非常に参考になる記事、ありがとうございます。

「考える」という肢別本のやり方、非常に良いと思います。
私は今択一の勉強に力を入れているのですが、「考える」ことと、短時間で回すこととのバランスが難しいです。

「考える」ことと「短時間で回す」ことはどのように意識していましたか?

Re: はじめまして

>>devilsadvocateさん
ありがとうございます。

「短時間で回す」というのは、短い時間で問題を解く、という意味ではなく、復習に取り掛かるまでの期間を短くするという意味です。例えば、一日に100肢が精一杯なのであれば、肢別本を1冊やり終えてから復習に取り掛かるというのでは、復習までの期間がちょっと空きすぎるかもしれませんので、1日100肢のうち、50は前日の復習、50は新規の問題、というような工夫をなされるとよいと思います。

早く回すのが大事だとはいえ、だからといって頭を使わないで解いていても、あまり意味がありませんので、考えることを放棄するのはやめたほうが良いと思います。ただ、あまり考えすぎるのも効率性の観点から問題ですので、例えば、5分10分考えてわからないような問題は、一旦飛ばして、別枠を設けて、しっかり教科書なり判例なりを読んで分析する時間を取るとよいと思います。私は、これはある程度まとまった時間をとって分析しないとダメだな、と感じた肢があった場合には、それをそのときには飛ばして、別に、そういう分からない問題や論点を分析する勉強時間というものを1日に1時間程度設けて、その時間に分析していました。

ありがとうございます!

なるほど。1日100肢だと、脚別本一周後の復習のときには、忘れてしまうからですよね。

私は、ついつい先の問題へ早く行きたくなるのですが、
「考えず」「復習を後回しにして」、先に行くよりも、「考えて」「理解して」「忘れないうちに」復習する方が結果的に効率が良さそうですね!

とても参考になりました。
詳細な解説どうもありがとうございます。

「評価」の記事も参考になりました。ありがとうございますm(__)m
プロフィール

ログヨミ

Author:ログヨミ
判事補。
https://twitter.com/roguyomi34

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